おもしろい人、ものが集まって
コラボレーションする。
それがアートの新しいカタチ。
東日本大震災を機に価値観が変わった。
今から2年前に遡りますが、大阪で都市菜園情報のWEBサイトを運営しているタネットというグループとタッグを組んで、ひっかけ橋を舞台にアートパフォーマンスを行いました。内容は、ニンジンの頭だけをカットして路上に並べるだけというシンプルなもの。ひっかけ橋という場所もあってか、多くの通行人が立ち止まり、瞬く間に人であふれかえりました。ニンジンを置くだけの単純なパフォーマンスですが、たった数分の間にまわりの視線を集中させたことから、カメラマンの方からは「やられた!」とお褒めの言葉をいただきました。現在、私は広告制作会社でクリエイティブディレクターをつとめる傍ら、「ハモニズム」の名称でアーティスト活動を行っています。双方で大切にしているのは、常に新しいことにトライし続けるマインドと、人を驚かせたいという思い。以前は、仕事とアーティスト活動を別ものとして捉えていましたが、最近はうまくリンクさせれば無限大の可能性があると考えています。
えびす橋人参畑計画
アーティスト活動にしろ、広告提案にしろ、振り幅の広さに驚かれるのですが、それは私がいろいろなことに興味のある証拠。常日頃から舞台、映画、絵画、ダンスなど多方面にアンテナを貼り、切り口を探しています。その結果、まれに「これとこれを絡めればおもしろい」と感じる瞬間があり、アイデアがどんどん深まっていきます。アーティスト活動でいえば、ギターの先端に筆を取り付けて、演奏しながらイラストを書くのは、音楽とアートがコラボレートしたパフォーマンス。絵が完成するまでのドキドキ感が好評で、数多くのイベントに呼んでいただきました。最近では、照明、音楽、メイクなどあらゆるテクニックを集結させたコスプレアート。色の持つ世界テーマに、それぞれの色をイメージしたブースをつくり、人形に扮したコスプレーヤーを配置。各色で香り、体感温度などを微調整することで、五感に響く作品になりました。ブースに踏み入れ、マネキンが人間だと気づいたときのお客様の反応は「しめしめ」といった感じでしたね(笑)。
上:HARMONISM×CosPAfo コスプレアート「SPACE MERMAID ill」
陶芸に始まり、インスタレーションにパフォーマンス、コスプレアート…と、作品はつねに変遷し続けていますが、最近になって言えることは“人のえぐるような作品に近づいている”という自負。特にコスプレアートにおいては、空間自体を作品にすることでお客様により臨場感を与えられることを、身を持って感じました。今後トライしてみたいのは、今までの積み重ねをトータルで活かすことのできる舞台パフォーマンス。ストーリーを練り上げて、出演者にどう演じてもらうかを考えて、照明・舞台芸術に関しては現在の仕事内容を生かして…。そうなってくると、アーティストやパフォーマーというより、演出家の域に入ってくるかもしれませんね(笑)。私がアーティスト名に用いている「ハモニズム」は、ハーモニー(調和)とイズム(主義)を合わせた造語です。仕事とアーティスト活動もそうですが、あらゆるテーマを織り交ぜることで、ものごとの新しいカタチを提案したい。そして、その最終形が舞台パフォーマンスであればいいと願っています。
取材・文/櫻井 千佳、写真/山下 拓也(一部ハモニズム提供)